小宮輝之
1947年東京都生まれ。
東京都立上野動物園園長。
1972年に多摩動物公園の飼育係になる。
2000年に上野動物園飼育課長となる。
主な著書 「日本のほ乳類」「ずらーりうんち」「ぼくのわたしのすいぞっかん」
 
「動物たちの子育て」 2005年7月30日より
1972年に多摩動物公園の飼育係として職につき、上野動物園の園長にいたるまでのことを

裏話も交えながらお話してくださいました。

新人は、花形動物を希望するそうなのですが、そこは小宮さんのお人柄でしょうか、

うさぎややぎなどのフツーの動物を担当なさったのだそうです。

それが、今の小宮さんを小宮さんにならしめたようです。

スターの動物はそれこそ1年間は初心者は触ることも出来ない。

ぞうなど担当したら、繁殖の経験も積めず時間だけが経っていくことも…

しかし、フツーの動物は新人であっても好きにやらせてくれる。

「誕生と死をたくさん見ることで知識を増やすことが出来た。」とおしゃっていました。

小宮さんの豊富な知識はこうして蓄えられたのです。

保育の先生が多い講演会ということもあったのでしょう(どこの園にもウサギはいますよね。)

私の知らないウサギの話をしてくださいました。

ウサギはカイウサギとノウサギがいるそうです。

日本では区別はあまりつけていないそうなのですが、海外ではカイウサギはラビットと言い

ノウサギはヘアーと言いしっかり区別をつけているそうです。ノウサギの育て方は大変難しいことも認識しているようです。

で、うさぎといえば「耳」

絵本などで走っているウサギの耳が倒れていたりするのもありますがそれはまちがい!だそうです。

ウサギが走っている時は緊張して周囲を観察している時なのです。

だからパラボラアンテナの役目をしているので耳は立てているそうです。

それと、暑い所に住むウサギは「耳」が大きく寒い所に住むウサギは小さいそうです。

つまり、冷却器、ラジエーターの役目があるのだそうです。

子どもに、だからウサギの耳は大事だと、ちゃんと説明してください、と力説しておられました。

それからウサギが2種類のフンをだすことも教えてもらいました。

一つは、コロコロの見かけるモノ。

もう一つは、麻の実のようなドロッとしたモノですぐに食べてしまうのだそうです。

ウサギの盲腸は大きいそうで、盲腸の中の菌、腸内細菌を食べないと消化できないんだそうです。

ビックリ!!です。

子どもたちに一番見近な動物だけに、小宮さんは伝えたかったんでしょう。

身近な動物でも知らないことはたくさんあるのだと、再認識しました。

それからスライドでゴリラ、ゾウ、キリンの出産シーン。

「みなさん、こういうの見ると力はいちゃいますね~」(笑)なんて言ってましたが、正直、感動しました。

ゴリラが出産直後に赤ちゃんの口や鼻に入った羊水などを吸ったり、なめたりしてきれいにしているのを見ると

母の愛を感じましたね。

ゾウのお母さんは生まれたての赤ちゃんを蹴り通しで、「おいおい、お母さんどうした?」で、とても危険でした。

今、その場面を見せられている私たちでさえも息を飲む緊迫感ですから、リアルタイムの飼育係の方たちの気持ちは

推して知るべしです。

子と母を離す決断をし、ドアを開けた瞬間、我に返った母ゾウ。映画を見ているようでした。

その後の出産では、このようなことはしなかったようで「学んだんでしょうね。」と小宮さん。

キリンの出産は、生まれて1時間で歩く必要があるため、

お母さんはしゃがんで出産ではなく、あの高い位置からドサッと子どもを生みます。まさに、生み落とします。

その刺激で(かなりの衝撃)子どもは立つのです。

自然とは過酷。でもそれだからこそ、進化を遂げて来たのでしょう。

スライドを見せてもらったり、経験を通しての一言一言を聞きながら

小宮さんが、飼育現場で感じた生物の多様性を少しですが、感じることができました。

みな、違う子育てをしている。

これは人間にも言えることで、多様性を認めることが強いては、みなが生き残ることなのでしょう。

動物を通して、人間を考えた講演会でした。

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