去年の講演会ぶりです。
前日のサイン会でそう伝えるとニッコリ。
購入した本を見て「ここで買ったの?」「はい」
「なかなか、こういうの理解してくれないんだ。ありがとう。」
「ふしぎのアーティストたち」という、田島さん曰く、エッセイ集であり芸術論集。
田島さんの絵を知れば知るほど、生き方に興味がわいてしまい思わず手にした本でした。
そして次の日、講演会です。朝の9時から。
前日の元永定正さんに敬意を表してでしょう、「ちょっと、水飲んでみようかな。」と
講演の初めに元永さんと同じように演台の水を飲んで、笑いを取っていました。
ほんと、いつもお茶目な方です。
最初に話されたことは、
軽井沢 絵本の森美術館の今年の企画展の話でした。
「いのちの歓びと大地のめぐみ」をテーマに木葉井悦子さんと、生前親しくしていた
飯野和好さん、片山健さん、スズキコージさん、そして田島征三さんの原画展です。
同じ匂いのする仲間だそうです。(笑)
日の出村(今は日の出町)に住んでいた時、
木葉井さんがとうもろこし畑のスケッチをしたくて、訪ねてきたので、連れて行ったのはいいけれど
そのままにしておいて来た。(オキザリなんて言ってました)
田島さんはスケッチはしないので、その場にいることも出来ず、
「自分で帰るからいいの」と言われて、そのまま帰って来てしまった。
それが木葉井さんとの最後。
まだ、あのトウモロコシ畑に木葉井さんがいるようで、今でも心に引っかかっている。
田島さんのひととなりが伝わる話だなと私は聞いていました。
木葉井さんのことをすばらしいアーティストと紹介し、
今年の絵本ベスト3位に入っていたと感心なさっていました。(復刊版の「ぼんさいじいさま」)
自分の絵本は、こういうのには、絶対入らないと。(笑)
没後10年たって売れてくる、なんてカッコイイんだ。
10年たって売れはじめたゴッホ、モジリアン、木葉井悦子。
自分もそうなりたい!!のだそうです。
後半の話にも出てきたのですが、
「一般的に、人々は新しい仕事や、ほんとうに人の心を救うものはすぐには分からない。
自分の中に既成の美意識を持っている。
その狭い美意識があるため、そこからはみ出しているものには抵抗感、嫌悪感を持つ」
初の絵本「ふるやのもり」をはじめ、「くもだんなとかえる」「しばてん」ですから。
そして、日の出の森を守るためのごみ処分場反対運動に10年以上闘われた経験から、
まさに、身をもってこのことを感じてきた田島さんの心の叫びでしょう。
「きたなさの美」こどもたちは、ピュアに分かるんだと「ふるやのもり」は思い入れの一冊のようでした。
90年代の代表作とまで言い切った本、「いろいろあってもあるきつづける」はもう一冊の大事な本。
編集に元永定治さん、福田繁雄さん、谷川晃一さん、野見山暁治さんたちが関わり、遜色がないものを作れたとおっしゃていました。
この絵本はこれまで田島さんが描いた、様々な絵をコラージュしてできたものだそうで
そういう意味でも、思い入れはひとしおなんでしょう。
即売会に走りましたがやはり売り切れ。こんな話を聞いてしまったら誰でも欲しくなりますよね。
「ガオ」に引き続き、一番新しい絵本「モクレンおじさん」を購入しましたが、
田島さんの作品の中にはいつも、いのちのエネルギーを感じます。
ましてや、元いのちの木の実にはやはり力が有ります。
木の実アートは、がんと闘って何度も生還している田島さんのいのちと
重ねて見てしまうのは私だけでしょうか?
講演中にも「いのち」「たましい」「ちから」「エネルギー」
などなど田島さんの作品から感じられる言葉を何回も口になさっていました。
「芸術家は出来上がった画風で通すことは許されない。
たとえ自分の作品でもそれは、盗作になる。同じものには価値はなし!」
つねに、自分とも闘っている田島さんならではの言葉。
私はこの言葉を聞くためにここにいたと思いました。
最後の話は、またまた征(せい)ちゃんらしい話です。
来年の夏、高知県立美術館でふたごの兄の征彦さんと2人展をやる予定なんだそうですが…
田島さんが病気から生還するたびに同年代の親しい人が亡くなる。
ひがしくんぺいさんに薮内正幸さん。長(新太)さんも死んじゃったし
「今度死にかけたら、征(ゆき)ちゃんだね。」と言ったら、激怒!!(笑)
征三さんのことを誰よりも心配してるのに!ですよね。
どうぞ、仲直りはもちろんのこと、お体大事になさって、お二人のご活躍楽しみにしております。
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