あの直木賞作家の志茂田景樹さんです。
多才だとは聞いていましたが(タモリさんとの番組で)
読み聞かせ隊長をなさっているとは…
当日は、いろいろな意味でワクワクしながら会場へと向かいました。
はたしてお召し物は、景樹、いや、もとい!過激でしたね。
ライトブルーのジーンズを膝上で切り、その上はランニング。
ブルーのハイソックスにホワイトスニーカーにシルバーのライン。
本人曰く「あんまり暑いので黄色いふんどしで来ようと思ったんだけど
駅で止められるのでこんなに地味になってしまった。」のだそうです。
1998年、秋。福岡の書店のサイン会場で読み聞かせをなさったことが
この読み聞かせのきっかけとなったそうです。
130名程集まったサイン会に30名ほどの子ども。
その子どもたちにした読み聞かせの反応にびっくり。
子どもばかりか、大人の方からも「元気がでた。」「心が洗われた。」などの感想をもらって
年齢の垣根や線引きは出来ない、感動は分かち合えるものだと思われたとか。
始めたころは奥さんと2人でなさっていた活動も、次の年の夏、ボランティアの方が10人を超えたところで
「よい子に読み聞かせ隊」を結成。
今回も、スライド係は奥様。まさに夫唱婦随。
素敵な奥様がいらっしゃるからこその、志茂田さんだということもよく分かりました。
そして、フルートを演奏なさっている辻本佳世さんは、東京交響楽団に所属し、演奏活動も行っているそうです。
志茂田さんとの息もぴったりで、そこはプロゆえにというところでしょうか。
他の読み聞かせとちがうところは、まず、志茂田さんが活字を追ってないということです。
物語のスライド上映はしますが、ストーリーテリングの形態をとっているのです。
その記憶力と表現力たるや、感心しました。
口語りですから、やはり、語り手を選びますね。
そして、フルートで臨場感をかもしながら、絵本の世界へと誘っていきます。
志茂田さんの絵本、「ぞうのこどもがみた夢」
甘えん坊の子ぞうのちょっと悲しい自立の話。
母が死んでいく話は弱いな~私、なんて思っていると、志茂田さんの話が続きます。
楽しい絵本を選ぶ母親。
自分もその当時はそう思っていた。でもどこかでちがうとも思う。
そんな時に、「娘が流す涙を見てホッとした」という手紙を読者からもらった。
あぁ、そうなんだと。
絵本を通して伝えたい事は、いのちの尊さ、いのちは限りがあるからこそ大切。
だからこそ、生きるということは大切。
子どもにはそれを、はやく知ってもらいたい。
今の若いお母さんはいのちの尊さの認識が欠けている。
いのちの感受性が欠けている。
昔は3世代で暮らしておじいちゃん、おばあちゃんも一緒。
おじいちゃんが死んだ悲しみを通して、無くなるということを肌で感じた。
自然に悟った。いのちは大切と言葉ではなくて、悟った。
読み聞かせの時には、4~5才でも涙を流す。そんな絵本を組ませている。
涙を浮かべている子は、回りを大切にする子になる。
ジーンときてしまいました。
志茂田さんが、子どもの絵本の世界を広げることを心がけていることが
伝わってきました。
それから、今日の演題「実践講習会」と銘打つだけあって
こんなコツも。
先ず、くじらの絵本を読む前にくじらの話をする。
「くじらって180種類のくじらがいるんだよ。どんなのがいるのかな?」
「ザトウクジラ、マッコウクジラ、ミンククジラ…」(必ず詳しい子がいるそう)
「じゃぁ、一番大きなくじらは?」
「シロナガスクジラ、30mぐらいにはなるんだよ。ギネスブックには36mのクジラがのってる」
「口ひげはなんのため?」
「あんなに大きいのに、ちっちゃなオキアイやプランクトンを食べるためなんだね。」
「でもね、もっともっと大きいくじらがいるかもしれないよ~」
と絵本「まんねんくじら」へと、引き込んでいきます。
前フリがあると、絵本への集中の仕方が全然ちがうそうです。
それから「ぽんちとちりん」。
そして、アンコールで、「ひかりのにじゅうまる」。
会場は30人程でしたので、すぐそばに志茂田さんがいらっしゃるという、
贅沢な時を楽しませていただきました。
この日本から、世界を豊かな社会にしていきましょう。
それには、こういう小さな積み重ねなんですよ、というお言葉でお開きとなりました。
ライブ感覚の「よい子に読み聞かせ隊」は新しい読み聞かせの方法を提示しているようで
新鮮で貴重な、経験でした。
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