「12月15日から74さまになります。」会場、大爆笑です。
日本を代表する詩人、世界の詩人いずれノーベル賞も手中の方ですもの、このぐらいの言葉遊びはお茶の子さいさいへのカッパです。
イトーヨーカドウのエントランスホールでこの会は、始まりました。
1時半からなのですが15分も前でしょうか、いきなりの登場に拍手も忘れてしまいました。
どうやら、サインをなるべく多くの方にとの、谷川さんのお心遣いのようです。
早く行って、本を買い求めた甲斐があり、整理券7番です。
谷川さんにお会いすることを、母以上に楽しみにしていた娘の手には小学2年生の国語の教科書。
握手までしてもらい、母娘、感激の一瞬でした。
会場は、少しだけ高くなった演壇の前に、赤いカーペット。子どもたち用です。
その後ろにイスが設定されています。
買い物客が行き来し、館内放送が流れるままの中での始まりに、心が痛みましたが、集まった方たちの
熱い思いが、その場所を、谷川さんをも、包み込んでいたと思います。
「ようこそ谷川俊太郎さん」「We love子ども図書館」
なんと、文芸館の製本でお世話になった井口さん手作りの歓迎カードです。
偶然、ご一緒できたのですが、2列目ということもあり、そのカードの「LOVE」の部分を持たせていただきました。
「分かったよ。」と谷川さんのひと言、嬉しかったですね。
童話屋の編集長の田中さんが司会進行ということで、ご自分と谷川さんとの出会いの話からです。
30年前、東京渋谷で童話屋書店という本屋をなさっていた時、谷川さんが突然いらしてこう、おっしゃったのだそうです。
「いい本屋だね。こういう所で詩を読みたいんだよ。」
もー、すぐデパートに走り40個のイスを買ってきたんだそうです。
それがきっかけになって毎月のように作家さんや、絵描きさんの集いが始まりました。
そこで使われたスピーカーがよく故障し、その度に修理してもらったのが谷川さんだったそうです。
田中さんと谷川さんのほのぼのとした信頼関係が伝わってきたエピソードでした。
その田中さんが、谷川さんの今年の代表作になるとおっしゃった「シャガールと木の葉」の話が印象的でした。
その詩の最後に「その涙はどこからきたのだろう」というフレーズがあります。
それを読んで、田中さんは60年ぐらい前の「ONCE」という雑誌に載っていた谷川さんの詩のフレーズを思い出します。
「人間として意識しただけで何か涙ぐんでしまう」18才の時の詩なんだそうです。
同じ言葉ではないにしろ、同じレベルでこの世界をみている。
こんな若い時に大事なことに気がつき以来今日にいたるまで、同じ感性で詩を書いている。
谷川さんの言葉が瑞々しいのは、田中さんの感じているこれだったんですね。
こどもと同じ感性の絵が、特別の絵描きさん以外は描けないのと同じで、
言葉も、この感性なくしては、あり得ないのでしょう。
谷川さんの言葉が子どもの支持をえるのは当たり前です。
こんな話も続いてでます。
集英社のPR雑誌の先月号で
「詩の擁護」なぜ小説がつまらないのか。という過激(?)な詩をのせているのだそうです。
谷川さんは詩しか書けなくてほんとうに良かったと言われているそう。
「詩は時に我を忘れふんわり空に浮かぶ。
人間の業を書くのが小説の仕事。
人間に野放図の喜びをもたらすのが詩の仕事。
小説が魂の出口を探して業を煮やしている間に
詩ははればれとワープする。
人間が滅びなく進むあさっての方向に」
小説を、書かないかと編集者に何度か言われたが、何故か書けなかった。
何故か?
それは、詩の方が人間の幸福を書くものだから。
谷川さんは100%母に愛され、その後の女性たちからも100%愛された。
だから自分には恨みつらみはない。
夫婦ゲンカをした直後でもいい詩が書ける。
それを聞いて、私は有ることを思いました。
「お守り」も徳のある方が書かれたものだけ功徳がある。なんでもいいわけじゃない。
こんな、「幸せ感」をいつも心に持っている谷川さんの言葉に功徳がないわけがない。
詩ならなんでもいいわけじゃない。
そんなことを考えていました。
それから、いよいよ谷川さんの詩の朗読が始まります。
会場のリクエストにバンバン応えてくれます。
読んでもらいたい本を高く掲げます。それを谷川さんが選びます。
私も上げたのですが、
「動物美術館、また珍しいの持ってるね。」と言ってはいただきましたが、絵をみながらじゃないとねと却下。
娘のリクエストは通りました。
いるか
いるかいるか
いないかいるか
いないいないいるか
いつならいるか
よるならいるか
またきてみるか
いるかいないか
いないかいるか
いるいるいるか
いっぱいいるか
ねているいるか
ゆめみているか
ものすごいスピードです。
同じスピード感は「のみのピコ」でした。
「もこ もこもこ」「ぞう」「けんかならこい」「はだか」「たね」「わるぐち」
15,6は読んでいただいたでしょうか。
谷川俊太郎を満喫した時間でした。
それから娘が、今日の詩をどう思ったかは聞かないでおこうと思います。
きっと、大人になった時話してくれる、
その時まで楽しみに取っておきたいと思います。
そして、赤いカーペットに座っていたこどもたちの心にも、何かが残っているのです。
2005年 10月22日、確かにこの日「谷川俊太郎」とこの時間を共有したという事実を胸に…
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