読み聞かせ 
 読み聞かせボランティア養成講座 第1回 2005年9月14日
待ちに待った1週間後の水曜日、自分の意思で最前列に座りました。

意気込みだけは、いつも人一倍あるのですが、今回は取材もかねていますから、そりゃあ私、鼻息あらくなっています。

二人座りの机が3列で、書類やリストが入った封筒が、机の上にセットされています。

何やら、学生に戻ったようで、回りの方も華やいでいます。

隣に座るも他生の縁。自己紹介させていただきました。

お隣の0さんは、お孫さんもいらっしゃるそうなんですが、お話させていただくと勉強熱心なのがとてもわかります。

若いころからアンテナを立てていた方で、

20年前には、「視覚障害者のための音訳ボランティア養成講座」も受けられたそうです。

人生経験ゆたかな方と同じものを学ぶ刺激までこの講座でいただいたような気がして嬉しく思いました。


開講式

浜松市立中央図書館、館長「徳増さん」のご挨拶です。

以前は、「児童家庭課」(なかよし館)に勤めておられ、

子育ての難しさや読み聞かせの大切さを、そこで感じていたとのことでした。

今年は、「文字・活字文化振興法」という法律が、7月22日に成立し、

そして、10月27日、読書週間が始まるその日を「文字・活字文化の日」と制定したそうです。

一役を担うのが、図書館であり学校。

みなさんもこの講座を終了して、ここで学んだ技術や能力をいろんな場面で発揮なさって、

協力をお願いしたいとありがたい言葉をいただきました。


いよいよ始まりです

講師は説明会の進行役だった、はまゆう図書館の「島田さん」。

「みなさんの選ばれた幸運を最大限いかせるよう頑張りますのでみなさんも、快出席でお願いします。」

レジュメにそって進行します。


1.浜松図書館における、子どもと本に関わる業務

  図書館作成の冊子等の説明

 「あかちゃんといっしょ」

 「おうちで読んであげたい150冊の絵本」

 「読んであげたい昔話と物語の本」

 「おはなし会のための絵本リスト」

 「小学生向 読んでみませんか」

 「中学生の時に読んでほしい本」


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2.子ども時代に出会う(物語)の大切さ

(1) おはなしの主人公になりきり(同化し)主人公と同じ体験をして自分のものとする。

  ここで、「チムとゆうかんなせんちょうさん」を紹介。

(2) いろいろな社会を知り、人間を知る。

  島田さんの小さい頃の話を交えながら 昔と現代の社会の違いを話されました。

  まだ自然に手がとどき、異年齢の子らと遊び、その子たちの生き様を普段の生活で見る事ができた昔。

  今の子どもは、自然にうもれて遊んでいない。だから、体験を少しでも絵本の中でできればと思う。

   「ペレのあたらしいふく」を島田さんの読み聞かせで。

  100年近くの前の本ではあるが、この本は感謝する気持ち、できることは一生懸命やる、ということが書かれており

  こういう本を読めばそういうことも、子どもの心にも浸透していくのではないか。

  こういう本を選んであげたい、こういう本を接しさせてあげたい、ふれさせてあげたいと思う。


(3) 大きくなって世の中に出ていく時の心構えや知恵を得る。(要細は第三回昔話の講話で)

  ラジオやテレビの無い時代は、大人が子どもに昔話をすることによって

  隠れたメッセージを伝えていたと言われる。

  それが、子どもたちへの力づけにもなっていた。


3.読んであげることの大切さ

(1) 信頼できる大人に生の声で読んでもらうことにより安心感を得る。

  ここで元福音館編集長、齋藤惇夫氏の

  「現在(いま)、子どもたちが求めているものー子どもの成長と物語」より

「小さい本というものの中には、天国と地獄がおさめられているのです。

ひょとすると天国と地獄の、さらに向こう側まで行くことがあるかもしれません。

しかも、主人公になりきって自分で、旅にでなくてはならない、

そして、さまざまな事件に遭遇しながら、人間という得体のしれないものに、正面から向かい合わなければならないのです。

誰でも、生涯を通して続けなければならない旅ではありますが、しかし、幼い子どもにとっては、一人では絶対無理な旅なのです。

昔話の「スーホのしろいうま」にせよ、「三匹のこぶた」にしろ、「カチカチ山」にしろ、「ねむり姫」にしろ、あるいは「ピーターラビットのお話」にしろ「チムとゆうかんなせんちょうさん」にしろ「かいじゅうたちのいるところ」にしろ仮に字が読めたとしても、一人で読むには怖すぎる話です。

火が嵐が、恐ろしい大人が、動物や怪獣がおそってくるお話なのですから。

主人公となって一人で、物語の世界で冒険することなどは、まず不可能です。

怖くなったら、いつでも逃げ込める人、抱いてくれる人、頼れる旅の道連れ、水先案内が必要なのです。

身近かな、安心できる普段から心を許している人、ほとんどはお母さん、かろうじてお父さん。

そして、園の先生、図書館員なのでしょうか。

そうすれば、子どもたちは安心して大冒険に挑むことができるという訳です。

この道連れがいないと、子どもたちは、特殊な例はのぞきますが、自分に耐えられる範囲でだけ冒険しなくなります。

あいまいなテレビで終わり、ということになります。」

島田さんは、回りにいる大人が絵本を読めば子どもの力になる。

大人になる準備をする、と言われていました。

齋藤さんや島田さんの言葉に感動でした。

転ばぬ先の杖ではなく、転んでも立ち上がる強さを、絵本を通して子どもに与えることができそうだと、私は感じました。

そしてここで、「こすずめのぼうけん」を島田さんに読んでいただき、3才の子どもの気持ちで聞きます。

もちろん、子どもに何回も読んで聞かせた話なのですが、

3才になって聞いてみると、こんなに怖い話だとは思いませんでした。

カラスや、山鳩のなんと大きい事でしょう。心細さったらありません。

もう、飛ぶこともできなくなってしまった時に、むかえにきてくれたお母さん。

私は、不覚にも涙ぐんでいました。

子どものころはこうやって話をきいていたはずです。誰でも、一度は、3才だったのですから。

読ませるのではなく、生の声で読んであげることの重要性を体感した、一瞬でした。

(2) 愛されているという満足感、幸福感を味わい読み手への信頼感につなげる。 


絵本そのものもいいのですが、子どもは読んでもらっている雰囲気を味わいたいと思っているのです。

頭の中や心の奥底に、絵本を読んでもらっていい気持ちだったということが、よみがえってくる。

読み聞かせをしていくと、子ども達は、その時なんでもない表情ですが、

心の奥底には、お話の楽しさや、力づけてくれた絵本が心の中に積み重ねられていくのです。

だから、長~い目で見てほしい。

「今、やっている読み聞かせは、この子たちが大人になってから、何かにきっと生かしてくれる」

そう頭の中のどこかにおいておけば、がんばれるのではないでしょうか?

「お話は作者のものだが、読んできかせたらその人のものに変わる」

10人読んだら10人の読み方。

絵本のとらえ方もそれぞれ。

その人が、どのようにこの話をとらえたかが大事。

その人の思入れがちゃんと伝わるように読んであげる。

子どももちゃんと受け止めて、心の中にしまってくれる。

(3) ことばの感覚をみがく。

絵本の中の言葉は、作者がえらんでえらんで、

選んだものだから、すばらしい言葉がつまっている。

こういうものを聞かせてあげる事によって、言葉の感覚も磨かれる。

普段の生活の中にもいかされることを願っている。


4.おはなし会の目的と意義

(1) 子どもと本を結ぶために行う。

(2) 子どもを読書に導く手段とする。

(3) 読み手の感性や思いを本を通して子どもたちに伝える。



うちで読んでもらうのと学校で読んでもらうのは、ちがう楽しさがある。

それは、自分のお母さんのとらえ方と、よその人のとらえ方がちがうということを子どもが感じる。

お母さんと違う読み方で楽しい。

お母さんが選ばない本で楽しい。

同じレベルの子が集中して聞く楽しさもある。

声を出す子がいたりすると、他の子は、ここが面白いということを改めて知ったりする。

仲間によって、その絵本の楽しさを倍増させる。

そういうところにも、おはなし会の目的はある。

そこで、私たちは子どもたちの水先案内人になる。


5.読み聞かせボランティアとしての心構え

(1) 子どもたちにとってどうかを常に考え、自己満足にならない。

  絵本を慎重に選ぶ。

(2)大人の代表であるという自覚をもつ。

(3) 子どものプライバシーとプライドを尊重する。

自己満足におちいらず、つねに子どもの立場に立って基本にもどって考える。

成長期の多感な時、絵本を与えるということは大きな影響がある。

子どもの一瞬一瞬、ひとときひとときを大事にしていきたい。

いつどこで、その子の心に影響を与える一冊になるか、考えるとコワい。

その一冊はきっと、なにかの力となる。

最後の個々のプライバシーを守る。

「~くんは、いつもおしゃべりしてる」みたいなことを、よそでしゃべらない。

自分もどこかで言われている?と、

変な事に、気をまわしておはなしそのものが楽しめなくなる。

子どものプライバシーとプライドに関わることは絶対に口にしてはいけない。

その場であったことや、子どもの様子をしゃべらない。


もう一つ、低学年の子どもを持つお母さんが、

自分の子のいるところへの読み聞かせで注意したいこと。

みんなの前で読み聞かせをしているお母さんを見て、

取られたと思いショックを受ける子がいる。もちろん自慢したいという子もいるが、

口に出せず、つらい思いをさせぬよう気をつけましょう。



これで、第一回の講義は終わりとなります。

中身の濃い、充実したもので、具体例もたくさんあり、分かりやすく、

即、実践できるものばかりで満足でした。

島田さんのプロの心意気を示していただき、ボランティアと言えど

子どもと相対する時は、やはり真剣にと、気を引き締めました。


次回の予告

「おはなし会の成功は、何を選んだかが大事!」

どう読んだかは二の次だそうです。

来週からは絵本の選び方が始まります。お楽しみに!

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