読み聞かせ 
 読み聞かせボランティア養成講座 第2回 2005年9月21日
「読み聞かせの成功は80%が選書です!」


今回の講座の趣旨は、これにつきます。

「読み聞かせ」はどう読んだかは二の次。そう言われて、とてもショックでした。
間の取り方とか、視線の配り方、本の持ち方、洋服の選び方、声の出し方。
私は、そんなものを習う気でいたのかもしれません。
そう、どちらかというと、テクニックを学ぶ、そんなことを考えていたせいかもしれません。

おはなしの部屋

今日はまず、いつもの2階会議室ではなく、1階の「おはなしの部屋」に直接集合です。
いつも、子どもたちにやっている「読み聞かせの会」の実体験です。
靴をぬいで、カーペットに座るためくつろぎムードになります。
最前列にOさんです。始まる数分またまたお話させていただきました。
Oさんは、3人いるお孫さんにお風呂の中でいつも創作のお話をなさっていたそうです。
それが続きモノ「よく、続いたと思う。」なんておっしゃっていました。
お孫さんたちも楽しみになさっていて、前日の話をちゃーんと憶えているんだそうです。
うらやましい!なんて素敵なおばあちゃまなんでしょう。
「私にもしてほしい!」というと「怪談ものになっちゃうよ」とコロコロ笑ってました。
ほんとに、お孫さんたち、羨ましかったです。


読み聞かせ実演

9:30~10:00 はまゆう図書館 島田さんの読み聞かせ

4、5歳向け おはなし会 プログラム
きょうのおはなし
だれとだれかとおもったら 東 君平 作 福音館書店
コッコさんのともだち 片山 健 作 福音館書店
かいじゅうたちのいるところ モーリス・センダック 作 冨山房
てとゆび 堀内誠一 作 福音館書店
だいくとおにろ 松居 直 再話 福音館書店


講義開始

その後、2階で講義を受けます。
講師は、可新図書館の「田中さん」です。
(可新図書館といえば小沢渡にあるちょっとオシャレな外観の図書館です。子どもコーナーが隠れ家風)
まず、本のジャンルの説明です。
 ・創作
 ・昔話
 ・民話
 ・科学
 ・ことばあそび
 ・詩
 ・なぞなぞ     など 

創作絵本の選び方

 今日は、 創作絵本(物語)の選び方  です。     

1、読む価値のある絵本を選ぶ

(1)読んでもらった子どもたちが幸福感を味わうことができる絵本。
(2) 子どもたちが、これからの長い人生を歩んでいくときの糧となる絵本。

*子どもたちは、とても正直。
 よい絵本であれば、たとえ読み方がつたなくても、お話が子どもを引っ張ってきてくれる。
 反対に、よくない絵本を選ぶと、楽しんでないのが直に伝わる。

*長く読み聞かせをやっていくと、毎回同じものではいけないと、目新しい絵本についついと飛びついてしまうが、新しい絵本は、まだ評価も定まっていないし、どのように使うかも決まっていないため注意が必要。

*自宅で自分の子に読む時は、失敗のフォローがきくが(良い本をたくさん読むとか)
 大勢の子どもの前で読む時は、今度いつその子たちに読めるか分からないので、注意が必要。

*今の子たちは、テレビ、ゲーム、まんがなどの、強い刺激をうけている。
 私たちは、それに追い打ちをかけるような絵本は渡したくない。

*子どもたちが、社会に出て行く時の手がかり、生きる力、生きる指針になるような絵本を選んでいきたい。


2、絵本の種類

(1) 創作絵本ー物語絵本・科学絵本・詩やことばあそび絵本

(2) 伝承絵本ー昔話絵本・伝説絵本・わらべうた絵本

(3) 絵本はジャンルによって評価が違うので、どのジャンルの絵本か確認し評価する。

ジャンルとは?
創作、昔話、民話、科学、ことばあそび、詩、なぞなぞ

グレードとは?
 何歳ぐらいの子どもが理解できて喜ぶか。

特性とは?
 
 読み手に経験を要求するか。

  聞き手に集中力を要求するか。

  くつろいだ雰囲気の中でこそ楽しめるか。
 
 聞き手が参加するスタイルの本か。(問いかけ、なぞなぞ)

  聞き手と接点が会った時のほうが、その絵本の良さがよりよく伝わるか。
 
  (行事、赤ちゃんが生まれ兄、姉になった、歯が生え変わる)

創作絵本とは?
  作者が絵・文を作ったもの

伝承絵本とは?
  文は昔からあるもので絵はあとからつけたもの


*これから、読み聞かせをしていく中で、自分の選んだ本がどのジャンルに入っているのか見極める。
 ジャンルによって選ぶ基準が少しづつちがうので、ジャンルにそった評価をし、
読み聞かせに使えるものか使えないものか判断する。
 
これからの講義でそのことは、学んでいく。

*読み聞かせをする時は、いろんなジャンルから選び、子どもたちの感性の幅を広げてあげる。

3、良い本の条件

(1) 主人公が明確であること

・こどもたちは主人公に同化しておはなしを楽しんでいる。同化することによって本の体験が自分の体験となって子どもは成長する。

*”つ”のつく年齢は特に同化する強い時期。
 主人公が明確でないと誰に同化していいのか分からず、本を楽しめない。

*主人公は人間に限らない。
   「アンガスとあひる」
   「あくたれラルフ」
   「しょうぼうじどうしゃジプタ」


(2) ストーリーは起承転結がはっきりしていること

・絵本年齢の幼い子どもたちが、おはなしを理解し楽しむためには、
 ストーリーがすっきりしていて簡潔な文章でかかれていることが大切。

*わかりやすい言葉で、筋がすっきりして作者の意図が一冊に行き渡っているもの。
 
「行って帰ってくる話」はこどもたちの基本的なパターンであるため、分かりやすい。

  「かいじゅうたちのいるところ」
  「おなかのすくさんぽ」
  「チムとゆうかんなせんちょうさん」  

・ストーリーとテーマは違う。
 絵本を評価する時は”テーマ”ではなく、どのように表現されているかが重要。
 いくら良いテーマでも、表現方法が悪ければ子どもに伝わらない。

*テーマがいいからストーリーがいいとは限らない。
「戦争と平和」「環境問題」「人権問題」高尚なテーマをとりあげても子どもたちには伝わらない。
おしつけがましいテーマは読み聞かせにはむかない。

*テーマにとらわれないで簡潔な文章で書かれている絵本を選ぶ。

(3) 主人公が幸福な結末を迎えること

主人公が幸福な結末を迎えたことが、子どもにもはっきりわかることが大切である。

主人公に同化している子どもは、主人公が幸福になれば、
自分も幸せな気分でおはなしを終わることができる。

*人生経験が少ない子どもにはハッピーエンド。
 
絵本に対する信頼感ができるまでは、ハッピーエンド。
 
とりあえず、子どもたちには、ハッピーエンド。

*おはなしに対するいい印象は次のおはなし会のステップになる。

*小学校高学年になれば悲しいおはなしもOKになる。
 それまでは、ハッピーエンド。

(4) 絵は、おはなしの持つ雰囲気にあった質の高い絵であること。

おはなしの持つ雰囲気と絵の雰囲気が一致し、なおかつ、
絵と文とが互いを補いあっている絵本が良い。

*絵が語りきれないものを文が、文がかたりきれないものを絵が補って相乗効果をあげているもの。

*動きがあって色感もよく、生命力にあふれて、語りかける絵がいい。

*将来、子どもたちは、イメージしながら絵のない本を読んでいく。
 それは、実際に目で見たもの、体験したものばかりではなく、
 小さい時に見た絵本の絵も、影響力を持つ。
 質の高い絵をたくさん見ていれば、質の高い絵をイメージする。
 絵本は今を楽しませるだけではない。
 将来の読書生活を豊かにするために、小さいうちから、
 キチンと書かれたものを、たとえ絵本であっても与えたい。

  「どろんこハリー」
  「ティッチ」 

4、読み聞かせに向かない絵本

(1) ストーリーが複雑にからみあったもの、心理描写が多いもの、情景描写が細かいもの、情緒的な言葉や形容詞を多様しているもの、会話でストーリーを運ぼうとしているもの。

(2) 絵が遠目のきかないもの。

(3) 1ページあたりの文章の多いもの。

(4) 絵本としては質の高い本だが、読み聞かせに向かない本もあるので注意が必要。 

「青い馬の少年」  会話だけで成り立っているため、耳で聞くと複雑。
「ねえさんといもうと」  良い絵本だが、向かない。 
「マーシャとくま」  文が多い。
「フランシス」のシリーズ。  ご自宅でゆっくりとどうぞ。 

5、グレード

(1) 絵本のグレードとは、どのような聞き手に読みたい本かということ。

(2) 聞き手のグレードは、年齢及び聞き手のキャリアを考慮する。

(3) 聞き手と絵本のグレードをしっかりつかむことで、両方のグレードのあっているプログラムは組める。

(4) 同じ絵本でも、大勢へ読み聞かせる場合と自宅で読み聞かせる場合とでは、グレードが異なる。

  

*年齢でひとくくりにはできないが、読み聞かせをしていく中で、
 子どもを注意深く観察して決める。

*理解ではなく感動を与えられるか。

*自宅で読むより少しグレードを下げる。(特に小学校1年生はちがう) 

6、創作絵本グレード別選び方

3歳未満とは?

言葉も聞けなく、経験もかぎられている。

いつでも保護者に見守られている状況の中、大人に言葉をたっぷりかけてもらう。

それを取り込んで、少しづつまね、言葉をタイミングよく使うことで、

保護者から喜ばれたり、褒められたりしながら言葉を獲得していく。

人とのコミュニケーションの土台を作る時期。

時の流れも分からない。

かけっこさせても競争にもならない。

ストーリーよりも言葉のリズムの美しさ楽しさが大切。


3・4歳とは?

日常生活はほとんど理解できる

言葉も使える

しかし、家族の中では、まだまだ小さい存在。

自分はまだ何もできないと感じている。

主人公がはっきりした、単純なストーリーが楽しめる。
    「どろんこハリー」
    「こすずめのぼうけん」
    「しょうぼうじどうしゃじぷた」

(シリーズものはグレードは一緒ではない。内容によっては対象年齢がちがう。気をつける)

5・6歳とは?

幼稚園年中、年長。

ますます意欲的に行動し、友達ともたくさん遊べる。

好奇心旺盛。

言葉の力も充分ついてくる。

因果関係をとらえられる。

長い話がきける時期。

内面的なことをあつかった話、ユーモアも分かる。 

想像の世界へ入り込む力もついてくる。

 因果関係やユーモアがわかる。空想の世界が楽しめるようになる。

 絵本を読んでもらうのに一番いい時期。
     「11ぴきのねこ」
     「おふろだいすき」リアリティあふれるファンタジー
     「ジルベルトとかぜ」 
     「かいじゅうたちのいるところ」
     「だーれもいないだーれもいない」 
     「ラチとライオン」内面的なおはなし 

1・2年生とは?

社会性を身につける

理解が深まる

人生の広さ、深さをもった話にも挑戦できる

ナンセンスがわかる

ちょっと長い話も大丈夫

 社会性を身につけ始め、自己と他者の区別がつくようになる
     「じごくのそうべい」底抜けの楽しさ
     「キャベツくん」ナンセンス
     「ちいさいおうち」時の流れ、社会性 

3年生以上

もう、絵本なんて という年代

幼稚と思い、絵本の楽しさから遠ざかってしまう時期


絵本から遠ざかってしまいやすい年齢だが、この年齢こその絵本がある。

絵本をばかにしないで楽しめるものを選ぶ。
  
  「歯医者のチュー先生」
  
  「ロバのシルベスターと魔法の小石」
  
  「ぼちぼちいこか」
    「ものぐさトミー」

5、6年生

選書が大変だが先ずリストにあるものから。



講義のまとめ 

先ず、読む価値のある本を選ぶ

     ↓

読み聞かせに向いているか

     ↓

子どものグレードにあってるか

きちんと選書して、読み聞かせに望む。

そして、最後に

「選書で読み聞かせの成功は80%決まる」


第2回の講義を終えて

選書がいかに大事か、骨の髄まで叩き込まれたって感じの講座でした。

今回、ボランティア専用の図書カードを作っていただきました。

1人1ヶ月、10冊借りることができます。

早速、リスト内の絵本5冊かりて、自分の子どもで反応を見ます。

初めて見るものですが、子どもの食いつき(?)がやはり良かったです。

司書の方の血と汗と涙の集大成のリストですもの、当たり前ですね。

その日何回も子どもから「また、読んで~」のリクエストがかかり、リストのすごさを思い知りました。

次回は、昔話絵本の選び方です。次回の報告をお楽しみに!

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