読み聞かせ 
 読み聞かせボランティア養成講座 第6回 2005年10月19日
会場の机の上には、3枚の紙。
「読み方実習の順番と、絵本のタイトルが書かれた紙」
「聴講生の選んだ絵本のリスト」

今日の内容

「プログラムの組み方・絵本の読み方・場の作り方」


プログラムの組み方

講師 可新図書館 田中さん

1、20~30分を目安とする。
・基本は一人で。
・慣れた人と初心者との組み合わせも考えられるが、事前の打ち合わせはかならず。
「20分と10分ね。」などと時間で決めない。
そうすると、10分の場合、7分の本を1冊読むと残りは3分。3分の絵本で、その年齢の子に合う選書は難しい。
先ず、子どもを中心に選書からする。

2、物語、昔話、科学、詩、ことばあそびなどの異なる分野の絵本をバランスよく組み合わせる。
・学校の読み聞かせは15分ぐらいで短い。
そういう場合は、1ヶ月、1学期単位でプログラムを考える。
・いい話は、1回使って終わりにせず、また使っても良い。

3,聞き手が知っている(あるいは知っているタイプの)お話と、知らない(あるいは知らないタイプの)お話を組み合わせる。
・再会する喜び、未知のものに出会う喜び味合わせてあげる
・知っている本ばかりだと飽きる。知らない本ばかりだと緊張感ばかりになる。両方を組み合わせる。

「(その本)知ってる、知ってるー!」と言われたりするが、そういう子の方が深く良く聞いてくれたりする。
「これを読んで!」と言われたりもするが、変えたりはしない。プログラムの指導権はこちらが持つ。それで、変えたりすると、周りの子が不快感を持ったりする。一人の子に惑わされない。

注意
・内容がちがって書名が似ているのは組み合わせない。
「三匹のがらがらどん」
「三匹のこぶた」

「なにをたべてきたの?」
「なにをたべたかわかる」

・内容が似ているのも組み合わせない。
「きこりとおおかみ」
「おどりトラ」

4,長いお話と短いお話を組み合わせる。
10分以上ー長い
7~8分ー平均

・長い話は、子どもたちは集中力を使っている。(読み終えると、はぁ~と息を吐いたりする)
長い話の後には、短い話。

4冊読むなら3冊目に長い話。
「お話会も食事といっしょ。メインの前にはオードブル。」

5,聞き慣れた子も聞き慣れない子も楽しめるように絵本を組み合わせる。
・グレードに幅を持たせる。・幅広く好まれる本を入れる。

「ふしぎなナイフ」
「キャベツくん」
「じごくのそうべい」
「よかったねネッドくん」

6,聞き手に緊張感を与えるお話と、くつろいで聞けるお話を組み合わせる。
・聞き逃すと次が楽しめないお話。「おしいれのぼうけん」「ちいさいおうち」「まんげつの夜までまちなさい」
・くつろいで、場面場面を楽しむ。=みんながよく知っている話。

7,プログラムのはじめは、だれにでもわかりやすい内容の絵本を選び、聞き手の反応をはかる。
 プログラムのはじめは、いろいろな情報を得ることができる。
・良く読み慣れて聞き手の反応が分かるもの=子どもたちの反応が分かりやすいもの。
今日は、集中してきけるなとか、今日はくつろぎの方かわかる。

8,その日の聞き手に合わせてプログラムを変更できるよう、常に予備の絵本を数冊用意する。
・3冊ぐらい。
予備の本といっても当日のプログラムの中の本と同じように準備をする。
・プログラムの中に、初めて読み聞かせで使う本がある場合、子どもの反応が分からないので、
「この年代には、この本」という自分で自信のある本をプログラムの中に入れておくのも手。

9,わらべうたや手あそびを加えるのもよい。ただし盛り上がりすぎないように気をつける。
・盛り上げすぎると集中力を欠く。続きのお話が聞けなくなる。
・プログラムに入れる場合は、緊張感を持って聞いた本の後の気分転換か、
読み聞かせの最後に楽しく終わる時。
・わらべうたはいいが、新作の手遊びは、注意が必要。

10,聞き手が参加できる本(聞き手とのやりとりを楽しむ本)は、初心者にはすすめられない。
・経験者も多様しない。落ち着いて絵本を楽しめなくなることもあるため原則としてプログラムの始めには使わない。
気分転換で途中にはさむのはよい。
・最後の本として使用。
「きんぎょがにげた」
「ねぇどれがいい?」

うけた、うけなかったという言葉を使うが、それは表面的なもの。

子どもたちがこれから生きていく力となるものが、心の中に入っていったかが重要。

表面的な子どもたちの反応に惑わされない。


11,1人で担当するのが望ましい。
・2人で担当する場合は事前にプログラムの打ち合わせをする。

その他注意すること
・絵本の特性、特徴をつかむ

「おしいれのぼうけん」23分、読み応えのある絵本。
           子どもの体調はどうか?
           読み手の方も、体調を整える。
「わたしとあそんで」あわただしい雰囲気では読めない。

読み聞かせの後、体育、水泳、総合学習ある時は、子どもたちも落ち着かない。
お話会の後、何があるかの情報も得ておく。


「だーれもいないだーれもいない」子どもたちと、信頼関係が結べるまでまってから。
読み手に心をゆだねるようになってから。知らない読み手だと楽しめない。

「なぞなぞの本」聞き手の反応を取り入れながらの本。これが意外と難しい。初心者には不向き。

生活体験に接点ある本
子どもーあまり季節は気にしていない。が、
読み手ー夏には夏の、冬には冬の本を!ただし先に行事ありきではなく、読む価値がなければ選ばない。
「およぐ」夏向き
「みず」初夏~夏向き

読み手に経験を必要とするものー読み応えのあるもの、長い話。
お話を自分のものにしてあるかどうかが大事。

意外と難しいのが言葉遊び。
「めのまえあけろ」
「カニツンツン」
「ころ ころころ」
初心者には不向き。他の人の読んでいるところを聞いたりし、
自分の中でこう読みたいというものができたりしたところで、どれがいいか編集してから子どもたちの前にもっていく。


少人数向き
「だるまちゃんとてんぐちゃん」
「からすのパンやさん」
楽しい絵本だが絵が細かい。20~30人にいたらプログラムの変更

まとめ

プログラムを組む技術ではなく

いい本をたくさん読んで、自分のレパートリーを増やす。

いい本を読めば読むほど選ぶセンスがついてくる。

そして、今読んでいる絵本が、幼年文学、児童文学のどこにつながっていくのか目を向けていく。

「読み聞かせ」をする時は大人の代表として自分自身の資質の向上を目指す。


絵本の読み方

・その絵本の価値を聞き手である子どもたちに正確に確実に伝えるように読む。
読み手が読むことによって本の良さを引き出してあげる。
子どもはこの本は、こんなに良かったのかと感動する。

1,読む前の準備
・開きぐせをつける
・180°しっかり開くように、見開きの真ん中を1カ所ずつグッと押さえる、
・汚損、破損がないか調べる。
・表紙ばかりでなく、大きなシミ、らくがき、破れていないか調べる。
自分の持ち込みの本であっても調べる。
カバーははずす。

2,読む時の注意
・書いてあるとおりに正確に、丁寧に読む。
・作者、編集者がていねいに検討しているので書いてある通りに。
言葉のつけたし、いいかえ、省くことはしない。読み手が勝手に変えない。

・絵本の雰囲気にあった読み方をする。
「まあちゃんのながいかみ」カラッと。
「三匹のこぶた」重厚な雰囲気で。
この2冊を同じ声、同じ雰囲気ではだめ。
どういう、イメージなのか、自分はどのようにその本をとらえたのかが大事。

・聞き手に伝わる適度な大きさの声で、はっきりと読む。
・人数は30人ぐらいがベスト

・落ち着いた静かな声でゆっくりと読む。
・自分ではゆっくりすぎると思うくらい。
聞き手にイメージする時間を与える。
(ごくまれに、早いテンポで読むほうがいいものがある。例「おおきなおおきなおいも」)


・大げさなセリフ回しや声色を使わない。身振り手振りも入れない。
・おまりにも大げさなことをすると、絵本の世界を台無しにする。

あるお母さんはオオカミはできるだけ怖くと頑張ってしまったら、それを聞いた子どもは
「お母さんのオオカミすごいねぇ~。」と母の演技力に感心してしまった。
作品の世界より読み手が目立ってはいけない。

ある時、田中さんがラジオを聞いていると落語家の話。
落語家の奥さんが「読み聞かせ」をやっていて、声色使わない話をご主人にした。
すると落語家も声色は使わないのだと言っていたそう。
同じなんだと感心した。

・ストーリーに最適のテンポ、リズム、間をとる。
・よく読みこなしていればおのずと…

・ページをめくった瞬間は文章を読まず、
聞き手が絵を見てストーリーを予測したり理解したりする時間(ほんの1,2秒)を与える。
・文章を読みおわったらサッとめくる。

・文中に聞き手が理解できないと思われることば(2つか3つ)あらかじめ簡単に説明しても良い。
(多くの場合、前後の文脈で理解でるため必要ない)
それ以上の説明が必要と思われる作品は、読み聞かせに向かないと判断した方がよい。
・良い絵本は一つ二つ知らない単語がでてきても楽しめる。
・キーワードが分からない場合はお話の前に説明する。
「ふしぎなやどや」やどやが分からないと困る。旅する人が泊まるところ。
「こがねのあしのひよこ」=金

いちいち「何、何」と聞いてくる子には意志表示はするが一つ一つ答える必要はない。

その他、気をつけること

・「タイトル」は必ず読む。(何回出ても)
・著者・出版社読む必要なし。

「シロクマちゃんのホットケーキ」
最初の見開きのページに本文で、タイトル。タイトルを先に読むよう気をつける。

・科学の本
詳しく書いてあるが、年齢によってはぶく時がある。
どこを読んで、どこを読まないは、自分だけで決めず、必ず仲間と相談してから決める。
「はなのあなのはなし」鼻の構造、省くばあいも…
「かぶとむしはどこ」
説明が多いページで「指さし」も有り。
「もうどうけんドリーナ」指さしあり。


・「歌」が入っている絵本
あえて歌わなくてもいい、リズムのある言葉でいい。
お話の雰囲気を崩さない程度で。


・文字のないページ
絵をみる時間をつくる。


持ち方・めくり方

1,安定した持ち方をする。絵本を揺らしたり傾けたりすると、聞き手は落ち着かずゆったり楽しむことができない。
持ち手は、右でも左でも可。
本の中心、下の方を持つ。

2,絵本をほんの少し(5度くらい)前傾させると、光が反射せず聞き手が絵を見やすい。
「ぼくのクレヨン」テロッとした紙の質。かなりひかる。

3,ストーリーの展開とのタイミングをはずさないよう、スムーズにめくる。
最後の見せ方。・表紙 ・裏表紙 ・表 ・全体

4,読み手の指や衣服、身体が、絵本の場面を隠さないように気をつける。
服装ーストライプで目がチカチカするものはさける。
アクセサリーキラキラは注意がいってしまうためやめる。


練習の仕方

1,本番同様に絵本を持って、声に出して読む練習をする。

たいへんな絵本
黒い場面に黒い文字
真ん中に文字
ー文章をみなくても読み聞かせできるぐらいにする。

読み間違いの対処
「ごめんなさい」と言ったり、大きなリアクションは、さける。


「おはなし会」の場の作り方

聞き手がくつろいだ気分で絵本に集中できるよう、また読み手も聞き手だけに気持ちを集中できるよう、あらかじめ環境を整える。

・会場をどうしても閉め切れない場合は、聞き手から会場を出入りする人が見えないように、読み手の立つ位置(座る位置)を考慮する。

・聞き手である子どもたちが椅子に腰掛けている時は、読み手は立って読む。
聞き手が座っている場合は、読み手は椅子に腰掛けて読むとよい。ただし、聞き手が多人数(30人を超える)の場合は、読み手は立った方が良い。

・子どもたちは広がりすぎないように座らせる。(扇形120°ぐらいのひろさ)
「この手の中に入ってね。」
少人数でも、前に1列は良くない。扇形にする。

・外部の声や音がなるべく聞こえないように工夫する。
学校ならあらかじめ、チャイムを切っておく。
部屋の外の環境も注意する。
田中さんが学校にいった時、読み聞かせする教室の前が給食の片付けするところで大変だった。

・聞き手に物(本、おもちゃ、ビニール袋等)もたせない。

・開始前に、読み手が大声で叱ったりしない。

・前置きや時候のあいさつはしない。

・読んだあとで感想を求めない。理解できたかどうか、面白かったかなどの質問をしない。

・読みはじめたら、読み手は途中で他のことをしない。
(中断して子どもに注意したり戸を締めたり…)

・できれば読み手以外にアシスタントが1名付き、出入り口の開閉や、騒ぐ子の注意などをするとよい。

その他の注意すること

年齢をくぎったおはなし会は、異年齢はできたらお断りする。
最初の1冊だけ。
設定をくずさない。

・走り回る子は1冊読み終えた時点で帰ってもらう。

・時間に遅れて来た場合、1冊読んだ時点で入ってもらう。途中での出入りは禁止。


記録の取り方

日時、場所、人数、年齢、プログラム、担当者名、感想、反省などの記録をとり今後の参考とする。

第6回の講義を終えて


来週からいよいよ「絵本の読み方実習」
この知識を持っての「読み聞かせ実習」は緊張します。

読み方実習の順番が発表され、みなさん、心中穏やかでは有りません。
予想はしていましたが、私の選んだ絵本「めっきらもっきらどおんどん」、32人中、5人も重なるとは思いませんでした。
読み聞かせは淡々とが鉄則ですから、あえて盛り上がりやすいこの本を選んで、声の出し方、間の取り方、注意してもらおうと考えました。
淡々とは読めないこの本、私の中ではある意味、一番難しい本です。
後ろの方もこの本を選んだそうなのですが、
「え~、何がいいか分からなくて片っ端からリストの本読んで、これが一番おもしろかったから選んじゃった~。
あなたみたいなこと、考えてなかった~。」半泣き。落ち着いて、落ち着いて。
5人5色。面白くなりそうな読み方実習です。
この展開の激しい本を、みなさんがどう読むのか、とても興味があります。

仲良しのOさんの選ばれた絵本も1人の方と重なったそうです。
10月26日に、その方2番目、Oさん5番目。
私は、11月2日の5番目です。この日の同じ絵本の方の中ではトップバッターです。
早く読んだ方がいいのか、悪いのか。
内心ドキドキですが、みなさんの「胸を借りる」というところでしょうか。

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