読み聞かせ 
 読み聞かせボランティア養成講座 第10回 2005年11月16日

いよいよ、最終日

早めに着いてしまい、まだ会場のセッティングの真っ最中でした。
いつもの、講義スタイルから、円形討論会スタイルに。
今日は「閉校式」と「情報交換」という内容です。

次々にみえるみなさんと、お話しながら会場が開くのを待ちました。
いつもは、すぐ席に着いて、終わればすぐ帰っていましたので、
同じ講義を受けたもの同士がこうして話すのも、最終日にして初めてでした。
やはり人それぞれで、意見を伺うと新しい発見があり、興味深いものでした。

会場前の有意義な時間の後、
「読み聞かせボランティア養成講座」最後の講義が始まります。

始めに「館長補佐 辰巳なおこさん」からのお話です。
先日の磐田図書館での「脇明子さんの講演会」の話から、ボランティア、図書館員とも共有したい心構えを話してくださいました。
辰巳さんも「子どもたちに良い本を手渡していくことの大切さ」を、この講演会から痛感なさったようで、図書館員もボランティアも、選書は「子どもと一緒に歩むんだ」と思うようにと。
100%間違えないということは、自分たちも無理だが、「できるだけ」と思うことでちがってくる。
これから、長いお付き合いになると思いますので、一緒に頑張っていきましょうというお言葉を頂きました。

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ちびくろさんぼ

次に、高瀬さんのお話。
これは、前回の選書実習の別枠版です。
「ちびくろさんぼ」は長年、浜松の図書館としてどうあつかったらいいか話し合ってきたそうなので、
少し、長めの書評をしていただきました。

1898年にイギリスの「ヘレン・バンナーマン」が書き、翌年出版。「The story of Little Black Sambo」
彼女の夫(英国の陸軍医師)がインドに赴任し、そこでインドの子どもをモデルに、自分の子どものために書いたお話。
その話を、アメリカの出版社が、アメリカ南部の奴隷の絵に差し替え出版したものが、爆発的に売れた。
その時の絵は「フランク・ドビアス」が描いたもので、これをもとに50種類ちかく出版されている。

日本でも、こちらをもとに、岩波書店が「岩波こどもシリーズ」の第1作目として1953年初版。
・黒人の身体的特徴を誇張していることが、不快、差別的。
・サンボの名称は黒人を侮辱するときに使う。
・アメリカでは、今はほとんど出版されていない。
・日本でも「黒人差別をなくしたい会」があり、出版すべきではないと、主張。
カルピス、だっこちゃん人形も岩波書店の「ちびくろさんぼ」が元になっていると攻撃され1988年絶版になった。
この年から、図書館も協議を重ねていった。
いろいろな立場の方も検証、議論をし、そして今も…
「子どもの文学としては名作」そういう意見も根強くあり、岩波が絶版しても他では、出版されている。
「ブラックサンボくん」「ちびくろさんぽ」
そして、バンナーマンの原作も出版された。

浜松図書館の今の見解は >
バンナーマンの原作ではなく、ドビアスの黒人の身体的特徴を極端に誇張した絵のものが名作として残っている。
作品としても、読者にしても黒人の差別意識が根底にあるのではないか。
(差別意識は難しいもので、バンナーマンの時代の意識は責められるものではない)
図書館としてそういう事実がある以上は積極的に子どもたちにすすめることはできない。
ただ、利用者からまったく隠してしまうということは、してはいけないことなので、閉架図書とし、借りることはできるようにする。

「読み聞かせ」にどうか >
現に、差別意識に苦しむ人がいる。
子どもたちの中に、無意識に差別意識を育ててしまうことは少なからずあるのではないか?
大勢の子どもたちに積極的に聞かせるものではない、のではないか。
強制は出来ないが控えていただくことをおすすめ。
子どもに説明すること自体「読み聞かせ」の意に反するし、知らん顔して読むというのも知ってしまった以上できない。

「ちびくろさんぼ」の絶版問題を考える資料が図書館にあるので読んで
自分はどう思うのか1度考えてください。
・「ちびくろ・さんぼ 絶版問題を考える」
・「焼かれた『ちびくろさんぼ』ー人種差別と表現・教育の自由ー」
・「ちびくろさんぼよ すこやかによみがえれ」

以上で、先週から引き続き行われた選書実習へのコメントは終わりです。

選書実習の意味

聴講生からの質問に答えていただきました。
Q.
「選書実習は、宝探しのようで、探してもないものを探せといったのですか?」(笑)

A.
リストには長い間自分たちが確信を持ったのしか載せていない。
選書のセンスもすぐに出来ないのも承知のうえ、敢えて探してくださいと言ったのは、図書館員がどういうところを観ているか見ていただきたかった。
こういう見方、見るやり方もあると気づけば十分。

この実習は、図書館員にとって、勉強になっている。
図書館にない本や、注目していない本が上がってくる。
その中で、リストと組み合わせてもいい本が、たまには出てくる。
いいものを教えてもらったからとすぐにリストには載せない。
いろいろなところで使ってみて、熟成させてから、ほんとうに手間をかけてリストを作っている。
「子どもにとってほんとうにいいのか?」と何年も迷いながらきている。

「『これほどまでしなくちゃいけないのか?』と聞かれますが
『これほどまでしなくちゃいけないのです』」とおっしゃった高瀬さん。
その時、浜松図書館員の「よりどころ」といわれる児童文学者の斉藤惇夫さんの声が聞こえてきました。
「responsibility」(責任)
浜松学院大学で、斉藤惇夫さんの講義を先日聴かせていただいたのですが、斉藤さんの浜松図書館への信頼は絶大なもので、
全国で一番のレベルとおっしゃっていました。
将来、保育者となる学生たちに、この図書館のリストで勉強するようにと話されていたのを聞いて、
そこで講座を受けている、私まで誇らしげになりました。
司書の方たちの選書の真剣さ、子どもに対する真摯な態度は、この文学者さえ認めるものだったようです。
偶然でしたが最終回にもってこられたこの話、絶妙なタイミングだったと思います。

質問コーナー

聴講生の質問に答える時間が設けられました。
これは、前回、紙にかいて提出しています。

読み聞かせの読み方

最初にお答えしていただいたのは、私の質問でした。
Q.
「読書アドバイザー主催の「読み聞かせ講座」にも行っているのですが、そこでの読み方は、こことはちがい、かなり盛り上がって読みます。子どもへの読み聞かせは、図書館指導の読み方がいいのではと感じましたが、老人ホームや認知症の老人への「読み聞かせ」は盛り上がった読み方の方がいいのではないでしょうか?
お考えをお聞かせください。」 

A.
先ず子どもたちにと長年やってきた「読み聞かせ」、それ自体も十分勉強できていると思っていません。
老人向けの「読み聞かせ」は、高齢化社会にこれからますます必要とされているもので、図書館でも大きな課題だとは思っていますが、勉強はまったく不足しているし、実践もしていないので、この御質問にはお答え出来ません。

質問を書いて出したあと友人などと話したのですが、今までの図書館側の丁寧な対応から
この質問には、答えないだろうと予測していましたので、これは、私にとっても図書館にとっても課題ということでひとまず、決着です。

読み聞かせ実践講座のメモ

Q.
読み聞かせ実践講座の時の、島田さんや高瀬さんのチェックしたメモをプリントしてもらえないか?

A.
みな様の「読み聞かせ」が新鮮なうちなのでコメントできました。
メモはほんとうにメモで自分でも読めないぐらい。
改めて清書するというのも、時がたっているので、お許し下さい。

私もコメントしていただいたのが全てとは思っていないので、
そのメモ見せていただけるのなら見せていただきたかったです。

図書館と読み聞かせ活動

Q.
一番、多かったご質問
「この講座修了後の活動について図書館として何かしてもらえるのだろうか?」

A.
・図書館で毎週水曜日にやっている「お話会」
    10:30~11:00 就園前のお子さんと保護者
    15:30~15:50 就園児
    16:00~16:30 小学校
希望があれば職員と一緒に「読み聞かせ」をしてもらう。現に1~3期生が活躍している。

・特別なお話会
11月27日 生涯フェスティバル などがある。
日曜は職員の勤務体制が半分になるためボランティアの方にやっていただく。
今回も1~3期生にやっていただく。

・なかよし館での「読み聞かせ」
就園前の子どもと保護者対象

・小学校での家庭教育講座にアシスタントとで。年2~3回。
各教室での「読み聞かせ」

現時点では、小学校での「読み聞かせ」は図書館として斡旋はしていないが、
ここの講座の修了生を派遣する、というそのような方向で検討中。 

ご自分で探すことを心がけてください。

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情報交換

全員の自己紹介より、今現在、実践している人たちの話を聞こうということになりました。
座っている場所が仇になり、私からです。

○ 幼稚園の「絵本クラブ」に入っているとはいえ、実践しているとはおこがましいと思うのですが、クラブ歴と大型絵本の方で活動していることは伝えました。
そして、高瀬さんに聞きたかったことがありお答えしていただきました。
「大型絵本の読み聞かせと普通の絵本の読み聞かせのちがい」

大型絵本や紙芝居はイベント的なもので、その場の雰囲気や時間の共有。
子どもの心にしみこみ、生きるちからを!の読み聞かせとは別もの。
養成講座に通うようになってからその答えは自分で出ていましたが、確認したかったのかもしれません。
自分の中で、割り切れない気持ちの方が大きかったので、こういうものだということが分かって、すっきりしました。
どちらがいい、悪いではなく別ものなんだそうです。

○ 小学校で年20回を15人のお母さんで。
自分たちの好きな本を選んでやっている。
小学生は本が好きではない。
文字を見ない子どもが多い。
一人でも多くの子どもたちが本ってつまらなくないと思うところを目指している。

○ お孫さんの小学校で。
一学期間は見学から。
「読み聞かせ」メンバーに元保母さんがいて、子どもを楽しませながら読んでいる。
それはどうなんでしょうか?

先生によってもいろいろ。声色を使う先生もいる。
読んでいる途中で、他のことをしたりと多少気になることはあるが、幼稚園、保育園は同じ子どもたちの中なので
いろんな面で取り返しがつくと思っている。
「ねないこだれだ」を眠れなくなるほどに、読むことではない。読み手が目立つことも、その場の盛り上がりを望むこともなく
この講座を納得していただけるのであれば、他のお母さんがどう読もうと自分がいいと思う読み方で読んでいただけたらいい。

○ 小学校で2年目。
火曜日の昼、木曜日の朝、
幼稚園の園長先生が月1回来て「読み聞かせ」をしている。
講座前は子ども受けする言葉遊びの本などを選んでいたが、講座をうけてからは選書が慎重になった。

○ 今年の4月から数えると数回だが小学校で。
小学校3年生のお子さんは保育園、小学校、放課後児童会で本を読んでもらっている。
放課後児童会では「読み聞かせ」の中断があるがフォローはしていると思う。
小さい時から本にふれている子とそうでない子のちがいはわかる。
以前は大人の目で選んでいたが、子どもの目線で慎重にということを気づかされた。
「えっ、うそ」とか涙を流す子とか「あぁ~、良かった」という子を見て
選書は子どもたちの心を大切にしていかなければいけないと感じている。

○ 小学校、昼休みこども体験教室8人のお母さんと。
朝読書。先生が分担表をつくって、どのクラスにも月に一回は回るようにと考えている。
お母さんの読み手が少ない。
選書が大事だが「また、同じ本?」と言われてしまう。もっともっと勉強していこうと思う。

・東京の小学校で7年間「読み聞かせ」と図書館、週1回。
浜松ではこども館で紙芝居。小学校で朝読書。
4月に引っ越してきたばかり。
今までの仲間をすべて無くしてしまい、寂しい思いをしているところにこの講座を受講した。
小さいうちからわらべ歌のころからが、大事というのがよく分かり、
小さい子どもとお母さんにいい出会いが有ればと思っている。


○ 1期生の代表者(特別ゲスト)
1期の講習は総論みたいなことをやっていた。
リストはそのころ無かった。
自分が「読み聞かせ」をした本は克明に残してあったのでリストができたときにチェックをし、ほとんど載っていて、自分の感性はくるっていなかったと感じて嬉しかった。
1回しか行かないところで読む場合、責任があると思って読んでいたので嬉しかった。
リストは、キリスト教の聖書のようなもの。基準になります。
お年寄りは出来た人だから、自分に必要ないものは聞きゃーしない(笑)
子どもは、真っ白なので良くも悪くも色がつく意識を持つ。

○ 2期生の代表者(ゲスト)
1,2期は14回の講座で3期から10回シリーズとなった。
「よみんぐ」という同好会を立ち上げ、1年に3回ほどの勉強会を開いた。
研修、勉強をしていくというのがこの会の柱だった。
1期生17人、2期生16人、3期生20人。今度の4期生を加えるとかなりの大所帯なので、「よみんぐ」は解消という方向で。
ステップアップ講座の方は図書館が主催してくれるということに落ち着いた。
図書館側に来たボランティア要請をそれぞれの期の代表がまとめ、それぞれの期でまとまり、代表者が同士が連絡を取り合う形にしていく。

終わりは始まり

挙手なさったSさんと、なんと、座っている場所で決まってしまった私とで4期生の代表は始動します。
終わった~ と思ったのは大間違いで、始まったのでした。

修了証書授与

この後、館長の徳増さんから「終了証書」をいただきます。
思い起こせば、夏休み気分も抜けないころからの毎週1回の勉強会。
気がつけば、「知ってしまったら知らん顔はできない状態」の自分に変わっていました。
グルメになっても、ジャンクフードも楽しみたい自分ですが、「子どもにとってどうなのか?」
このことだけは忘れず、選書していかねばと思っています。
1期生、2期生の代表の方は、人間的にも魅力的な方で、やはり前向きに生きる方は何をやっても輝くのだと、少しお話を伺っただけなのに感じました。
図書館職員の方の長年の大切な知識と、共に学んだ仲間と、すばらしい先輩を得たこの講習会、
有りがたく思います。
抽選会の時に「今の私に必要ならば、必ず受かる」と思ったことはまちがっていなかったんだと思います。

みなさんに感謝


図書館職員の島田さん、田中さん、そして高瀬さん。
今までの中で1番経験者の少ないこの4期生を指導してくださり有り難うございました。
1期生代表の方の言われたことを最後に記したいと思います。
「基本があっても、実践するとまたちがうので、やはり基本、次実践、基本、実践とらせん状に自分を引き上げて行く。
ボランティアなので、人は「ちがうよ。」とは言ってくれない。
だから自分で、自浄作用みたいなものを心にキチッと持っていないと、子どもたちに迷惑をかけてしまうと思います。」

今まで、同じ気持ちでこのレポートを読んでくださったみなさんに感謝します。
有り難うございました。

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