いくじ寺子屋
親がキレない子育て

(KYOKO'S レポート)

 いつの頃からか、悩んでいました。・・・

子供と一緒に生活をする中(子育て)で、キレてしまう私がいることに。

赤ちゃんの時は、可愛い・可愛いで過ごしていたあの幸せだった時間が、どこかに行ってしまったみたいに・・・。

こんなに可愛くて仕方のない子供に怒鳴ったり、ついには手が出たり・・・。

私って、病気?母親失格?いえいえ人間失格?

子供たちにとって、優しくて暖かいお母さんでいたいはずなのに・・・。

そんなある日、『親が、キレない子育て』講演会があることを知りました。

講師は、東京大学大学院教育学研究科教授で東京大学付属小学校の校長先生でもある汐見稔幸(しおみ としゆき)先生。

私は、自分に(時間にも)余裕が無く、子供が自分の思い通りに動いてくれない時に、やはりキレ易い。(子供は、私自身ではないのだから、当たり前のことだけど。と頭では解っているけれど)

こんな私に先生は、‘キレない子育て特効薬’をくれるの?と勇んで講演会に出かけて行きました。

がっしりとした体格にお髭のお顔。ソフトな口調から語りかけてくれるお話に、会場にいるだけで何だか不思議に安心してしまう。昔から知っているおじさまだったかしら?

そんな雰囲気の中で、講演会が始まりました。

冒頭、先生いわく「この講演聴いたからって、明日からキレなくて済むなんてことありませんよ。」え~!!私の特効薬は~・・・と心の中で叫びつつ、先生のお話は続きます。

「でも、何故キレてしまうのかということを少しわかっていると、これまでよりも自分でキレるのを減らす工夫ができます。そして、まず始めに言っておきたい事は、お母さん、自分を責めたり、一人で悩んで袋小路に入り込んでしまわないで下さい。あなたがキレるのは、決してあなたのせいではない。」

<何故、キレてしまうのか>

・人類史上最も難しくなった子育て

最近は、子供にキレてしまうお父さん、お母さん、特にお母さんが増えてきています。

これは、最近に限った現象なのでしょうか?昔の親はキレなかったのでしょうか?

今は、1から10まですべてのしつけを母ひとりの手で行わなければない状況に置かれながら、子育てをしている人が圧倒的に多いのです。

そんな余裕のない状況で、子供のやること全てを温かく受け止める。などということは、まさに神業です。

そして、昔のお母さんもやはりキレていたのです。

でも昔は、子供の面倒を見る人が母親のほかにもたくさん居たし、今ほど危険な世の中でもないワケで、‘邪魔だから、ちょっと外で遊んできな。’なんて表に出すことが簡単にできました。すると、あっちの家からもこっちの家からも‘ちょっと外で・・・’と家から追い出された(?)子供たちが、空き地や広場で群れて遊ぶ。

この群れには、年の大きい子供も小さい子供もいる。

この集団の遊びの中から子供たちは、優しさ・たくましさ・協調性・俊敏さ・忍耐力etc.を自然と対人関係の中から学んでいたのです。そして夕方になると、お母さんが迎えにきて家に帰る。

親が少々短気で厳しくても、間が抜けていても、子供は子供同士で補い合う場があったのです。そして、おじいちゃん・おばあちゃん・近所のおばさんなど、地域社会そのものが子供を育てる場となり、親の子育てを支えてくれていたわけです。

地域社会という放牧場があるため、親が子供に余り手を掛けなくとも自然に子供の育ちを促すことが出来、家という厩舎では最低限のしつけをするだけでよかったのです。

要するに、子育てに関わる親の負担が少なく、キレなくて済んだ。ということです。

今の世の中、昔と同じ子育ての環境を再現して行うということは、不可能に近い訳です。子育てにキレても仕方ないけど、切れないほうが良いのは当たり前。

では、どうしたらキレずに子供を育てることができるのでしょう。

<子育てにキレないコツ>

・開き直りも大切

   このように子育てが非常に難しくなった今の時代に、孤軍奮闘している私たち。

   多少キレても自分を責めてしまうくらいなら、「社会が子供を育てる環境に向いていないのだから仕方ないよ!私だけのせいじゃないよ。」くらいに開き直ったほうが、うんと楽になれます。

・ 助けを求めよう

   現代の子育てで1番大事なことは、他人の力を上手に借りることです。(お母さんが何でも抱え込みすぎないこと。)

   子育てに行き詰まり辛くなったら、「誰か手伝って!助けて!」と叫ぶのが1番です。

      -Nobody is perfect(完全な人などいない)- 

   これは、カナダの育児パンフレットのタイトルです。

   その冊子には、“子育てで1番大切なことは、困ったときに助けてと言えること。”

   “誰も母親になるように生まれてきたわけではありません。誰も父親になるように生まれてきたのではありません。みんな、母親に・父親になる練習をしながら子供と共に育って行くものなのです。”と書かれているそうです。

   今は、夫は仕事・妻は家庭を守る。という時代ではなくなってきました。パートナーがお互いを支えあい、子供を育て、家庭を作ってゆくのが1番なのです。

・ 子供の行動は、少々大目に見よう

   特に、幼稚園くらいの年齢までは、子供のいたずらは、大目に見ましょう。大人から見れば、いたずらに過ぎないことが、この年齢では、いたずらではなく結構真剣に遊んでいる事が多いのです。そしてこれが子供にとって、成長への階段を登る必要不可欠な行為だったりするのです。(子供が夢中で遊んでいることは、しばらく観察し存分にやらせる。)

それを始めから頭ごなしに「ダメよ!」では、子供の“やりたい”という欲求は抑圧され、終いには欲求不満で爆発!という事態が・・・

子供が小さいうちは危険のないよう配慮して、出来るだけおおらかにやらせてあげて、これ以上ダメというところは強い調子で言う。

6歳くらいになると、して良いことといけないことの分別がつくようになります。しばらくは大目に見ることで、毅然と禁止するときの効果も高いというわけです。

・ わが子に感動しよう

  親は、わが子のありのまま・その子らしさを見つけ、それを微笑ましく共感し、見守ってあげるのです。

  まだ、赤ちゃんだったあの時、立った・歩いたで感動していた頃の自分を思い出して下さい。

一人一人の子供が持つそれぞれの‘伸びる力’を発見して信じて励ます。子供の‘伸びる力’を信じて励ましている限り、親がキレることもずっと少なくなってゆくのです。

・ 身体をそだてよう

   子育てのテーマは、「頭」・「心」・「身体」の3つの部分を育てることです。

   この3つはみんな大事なのですが、優先順位を間違えると痛い目にあいます。

   自分の子供は、「優秀に育てたい。そりゃ、馬鹿より利口な方がいい。」とみんな思っているはずです。

でもまだ年端も行かない子供に早期教育ということで、知的能力の開発をしても本人が‘やりたい’と言っていない限りは、苦痛そのものでしょう。

しかし、優しいわが子は、親の期待にこたえようと頑張っているわけです。その結果、「自分がやりたい本当の事をやればいいのだ」という素直な心が育ちにくくなり、「親の言うことを聞いていれば安心だ。」と他者依存的な心に育ってしまうのです。

だから「頭」から育てるのは、うまくないのです。

では、「心」からはどうでしょう。

心とは、自分自身が体験した嬉しかったこと・悲しかったことなどを通し自然と育って行くものですから、心を育てるカリキュラムがあるわけでもなく子供たちの体験・経験そのものが心を作ってゆくのです。

「心」を育てるためには、体験・経験が必要だということになります。

そうすると、育て方の優先順位トップは、「身体」です。

体力的なことも勿論のこと。

人間いろいろな事を、身体で感じることが良くあります。

例えば“この部屋何だか息苦しい”とか“私この人、生理的にダメ”なんて身体が直感的に感じてしまうわけです。最近は物騒ですから、“このおじさん怪しい!”と身体で感じるような身体的判断能力を鍛えることも必要かもしれません。

また、自然の中で思いっきり遊ばせることは、「なんて気持ちが良いんだ!」と感受性豊かな身体を育てます。

感受性豊かな身体をもっていれば、様々なものに好奇心や興味を持つようになり、次第に「心」が育ってくる。するといろいろな事を考えるようになり「頭」も発達してくるのです。

バランスの良い育て方は、まず身体を育てることなのです。


<育児の秘訣>

身体が持っている豊かな力を伸ばしてあげること。(出来れば、緑豊かな放牧場で)そのためには、あれこれ指示せず危険の無い限りは、子供たちの自主性に任せること。(「アレをさせたい・コレをさせたい」と親が思うからイライラしてキレてしまうのです。)

基本的なことだけ守らせて、あとは放っておく。(遊ばせるのです。)

オランダでは、金曜の夜になると近隣の道路を封鎖して、一品持ちよりの路上パーティが開かれるようになってきたそうです。核家族が当たり前になり、人々が孤立化し始めた。コレはまずい!もっと支え合おう。「出ておいで!出ておいで!」と育児中の親の溜まり場が作られているそうです。緑豊かな放牧場を工夫して作っているのですね。

まさに“社会の育児力”

最後に先生は、『もっと優しくなろうよ!自然な人間関係が大事にされる、儲けにもならないけれど、人が喜んでくれることが大事だよ。そんな社会をみんなで作ろうよ。その為の切り口こそが育児問題なんだよ。』と結ばれました。

どうですか?少し楽になれましたか?

みんな、キレているんですって。私だけじゃないんだあ。

疲れてきたら「たすけて~!」って叫ぶので、そのときはヨロシク!

このホームページも、そんな育児中の親の溜まり場になれたらいいな!と願いを込めつつ。

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