長 新太

絵本画家の日記

絵本画家の日記

◯月◯日

センダックは、スゴイですよお!」

エッツは、いいですよ!」

ワイルドスミスはキレイですねえ!」

シュレーダーは、ウマイです!」

マックロスキーは、やはりいい!」

ミュラーはウマイです!」

キーツは、いいですね!」

スキャリーはかわいくていいです!」

ブリッグズはあたたかくていいですねぇ!」

永田萌はキレイ!」

おおた慶文はカワイイ!」

中島潔は、うつくしい!」

わたしは、ドーシタ? 

わたしは、ドーナンダーーーーイ!

◯月◯日
「かわいくて、キレイなものがキライなんですか?」と 女の人から詰問された。
ふだん、その種の絵本の悪口を言ったりしているから、 こんなことを言われる。
かわいくてキレイでいい絵だったらいいのです。
かわいくてキレイで低俗なのがいっぱいだから、悪口のひとつも いいたくなるのです。
こどもの本は、そのほうが、売れると信じている編集者がいる以上、 限りなく質は落ちていく。 

◯月◯日
子どもの絵の審査をした。いつも脳天に一撃を くらったようなめにあう。
子どもには到底かなわなぬ。子どもの本の絵を描いていて、 いいのでございましょうか?
子どもに見せる本を描いているなんて、実は、たいへんゴーマンなこと ではないのかしら?と、いつも思う。子どもの絵を見て 激しい嫉妬に悶々とした1日。 

◯月◯日
自由だ、自由自在だ。なにものにもとらわれてはいかん。チョコチョコと、 キレイに描こうなんて思ってはいかん。
うまく描こうなんて心は捨てねばならん。青空を手づかみにして、 絵具にまぜ、グイグイ描かねばならん。
「カワイーッ」なんていわれるようなものを描いてはいかん。とにかく、 なにものにもとらわれず 裸になって自由にならねばならんーーーパンツ1枚になって 風邪をひいてしまった。

絵本画家の日記 2

絵本画家の日記2



センス・オブ・ワンダー

◯月◯日
「子どもたちにとって『センス・オブ・ワンダー』 (不思議さにおどろく感受性)が如何に重要であるか」(レイチェル・カーソン)

◯月◯日
生真面目というのも困り者だ。
良識派を自任しているから、正々堂々としている。
児童書の迷択なども、コンクリートで出来たようなものばかりえらぶ。
たまには悪口も書きたくなるよ。
「ナンセンスに感動がありますか?」なんて詰問する。
あるので、ゴジャリマスヨーダ。


おなら



みんなうんち

◯月◯日
アメリカの女の子から『おなら』と『みんなうんち』を 学校にもっていったら大評判。
どうしてこんなことばかり考えるのですか?という手紙がきた。
ある編集者に 「おならの絵本なんてカルチャーショックだったんでしょうよ。」と 軽くいなされてしまったが、 『おなら』はわたしだけど『みんなうんち』は五味太郎の本だ。
でもわたしは いつもそんなことを考えているヘンなオジサンです、と返事をかいた。

◯月◯日 すべてのものに生命が宿る、というのがわたしの理念である。
民族学者のE・タイラーのとなえた万物精神論。
万物有魂論の「アニミズム」はわたしの脳を支配しておる。
しかし草花を愛して、人間を愛さなくなっている自分を発見して おどろくこともある。
情無い。